新任教育・現任教育の記録整備、ここを押さえれば安心|山田社会保険労務士事務所
警備業に関するコラム Series.02

新任教育・現任教育の記録整備
ここを押さえれば安心

法定時間・実施者の資格要件・記録様式の必須項目・保存年限まで。
令和元年改正・令和6年改正を踏まえた最新の実務ポイントを解説します。

警備業法施行規則第38条
令和元年改正対応
eラーニング
教育実施簿
📋
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令和元年の教育時間見直し、新任・現任教育の免除・短縮、eラーニング要件、 令和8年9月30日公布・10月1日施行の警備業法施行規則改正まで確認した内容です。
01

法定時間と教育区分の基本(令和元年改正後)

警備員教育は警備業法第21条に根拠を持ち、 具体的な時間数・方法は警備業法施行規則第38条で定められています。 令和元年(2019年)9月の改正により、時間数の計算方法が大幅に整理されました。

新たに採用した警備員
新任教育
20時間以上
  • 基本教育+業務別教育の合算で計算
  • 業務別教育の実地教育は5時間以内かつ業務別時間数の1/2以内
  • 業務従事前に完了させること
  • (改正前:30時間以上)
既に従事している警備員
現任教育
10時間以上/年度
  • 教育期が「前期・後期」→年度単位に変更
  • 基本教育・業務別教育の時間数の振り分けは自由
  • 資格・従事業務により免除または6時間以上となる特例あり
  • (改正前:前後期各8時間、計16時間以上)
📌 「統合」のポイント――振り分けの自由化 令和元年改正の大きな変更点のひとつが、基本教育と業務別教育の 時間数の統合です。旧制度では基本教育・業務別教育それぞれに 独立した最低時間が設定されていましたが、改正後は合算での管理に一本化されました。 そのため計画の柔軟性が増した一方、「どちらに何時間充てたか」の 記録管理がより重要になっています。
根拠法令・資料:警備業法第21条第2項/警備業法施行規則第38条/令和元年内閣府令第24号/警察庁「新任教育の教育時間数(新旧比較)」「現任教育の教育時間数(新旧比較)」
02

資格による免除・短縮の特例

検定資格の保有・実務経験・警察官経験などにより、 教育時間が免除または短縮される場合があります。 特例適用の有無が管理コストと記録上の正確性に大きく影響します。

対象者の区分 新任教育 現任教育 実務上の整理
一般の警備員
(免除・短縮の対象外)
20時間以上 10時間以上/年度 基本教育+業務別教育を合わせた法定時間
当該警備業務の1級検定合格証明書保有者 免除 免除 当該検定業務に従事する場合
当該警備業務の2級検定合格証明書保有者 免除 6時間以上/年度 新任は当該検定業務に従事する場合に免除。現任は基本教育免除、業務別教育6時間以上
当該警備業務区分の警備員指導教育責任者資格者証保有者 免除 免除 当該警備業務に従事する場合
最近3年間に警備業務に従事した期間が通算1年以上ある者 短縮あり 原則10時間以上/年度 従事させようとする警備業務と経験業務の関係により新任教育時間が異なるため個別判定が必要
警察官の職にあった期間が通算1年以上ある者 短縮あり 原則10時間以上/年度 新任教育は13時間以上となる区分あり。適用条項を確認して判定
⚠ 「資格がある=一律免除」ではありません 免除・短縮は、保有する資格の種類、資格に対応する警備業務の区分、実際に従事させる警備業務、警備業務経験によって結論が変わります。 とくに「1級」「2級」「指導教育責任者資格者証」は、当該資格に対応する警備業務かどうかを必ず確認してください。 新任教育・現任教育の判定は、警備業法施行規則第38条第4項・第5項の表に沿って個人ごとに行います。
根拠法令・資料: 警備業法施行規則第38条第4項・第5項/警察庁「新任教育の教育時間数(新旧比較)」「現任教育の教育時間数(新旧比較)」
03

教育実施者の資格要件

教育は誰でも実施できるわけではありません。 教育の内容・区分に応じて、実施者に資格要件が定められています。 「誰が教えたか」が記録上明確でないと、監査での指摘対象になります。

📌 教育実施者は「指教責・1級・2級なら誰でも可」ではありません 警備員教育は、警備業法施行規則第38条第2項・第3項により、 警備員指導教育責任者または当該教育についてこれと同等の知識経験がある者として国家公安委員会が定める者が実施します。

業務別教育については、当該警備業務区分の指導教育責任者のほか、 当該区分の1級検定合格証明書保有者で十分な指導教育能力を有すると認められる者、 または当該区分の2級検定合格証明書保有者で、合格証明書の交付後に当該警備業務へ継続して1年以上従事し、かつ十分な指導教育能力を有すると認められる者などが対象です。 したがって、2級合格証明書を持っているだけで直ちに教育実施者になれるわけではありません。
⚠ 実地教育の算入上限に注意 新任教育における実地教育は、警備業法施行規則第38条第4項の表により、 警備員の区分ごとに算入できる上限が定められています。 一般警備員では、実施する業務別教育の2分の1の時間数かつ上限5時間です。 経験者等では上限が異なるため、一律に5時間と処理せず、適用区分ごとに確認してください。
根拠法令・資料:警備業法施行規則第38条第2項・第3項/「警備員教育を行う者等を定める規程」(平成8年国家公安委員会告示第21号)/令和6年3月6日付 警察庁丁生企発第127号
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eラーニング活用の要件と注意点

警備業法施行規則第38条では、講義について電気通信回線を使用する方法も認められています。 ただし、単に動画データを渡して視聴させれば足りるわけではなく、 本人確認・受講状況・知識習得状況・質疑応答機会を確保する必要があります。 また、警察庁の現行解釈運用基準では、録画した教材等を使用する場合、 受講者の初回視聴時にスキップできない教材である必要があるとされています。

✅ 法令上確認すべき要件
  • 録画教材等は、受講者の初回視聴時にスキップできない
  • 受講者本人であることを確認できる
  • 受講状況を確認できる
  • 警備業務に関する知識の習得状況を確認できる
  • 受講者が質問できるなど、質疑応答の機会が確保されている
❌ 避けるべき運用
  • 初回視聴時から任意の箇所へスキップできる
  • 誰が受講したか確認できない
  • 再生した事実だけで受講完了とする
  • 理解度・知識習得状況を確認しない
  • 質問できる仕組みがない
  • 実地教育を動画視聴だけで代替する
✅ 実務推奨:eラーニングの証跡を残す 法令上必要な要件を満たしたことを後から説明できるよう、 本人確認記録、受講日時・受講状況、確認テスト等の結果、質問・回答の記録を保存し、 教育実施記録と対応関係が分かるように管理することを推奨します。
根拠法令・公的資料: 警備業法施行規則第38条(講義の方法に関する規定)/ 警察庁 令和6年6月27日付 丙生企発第240号「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」第20・2(9)〜(14)
05

記録様式の必須記載事項

教育計画書・教育実施簿はどちらも法令上の備付義務があります。 「書類がある」だけでは不十分で、必要事項がすべて記載されていることが求められます。 以下の各書類の必須項目を確認してください。

📄
教育計画書
当該年度の開始日の30日前までに営業所に備え付け
対象者の範囲必須
教育対象となる警備員の範囲(新任・現任の区別、業務区分ごと)
実施時期必須
当該年度における教育の実施時期を記載
教育内容必須
基本教育・業務別教育の内容を具体的に記載
教育方法必須
対面講義・遠隔(eラーニング)・実技訓練・実地教育の区別を明記
時間数必須
科目ごとの計画時間数。合計が法定時間以上になることを確認
実施者必須
教育を実施する者の氏名を記載。実施者が法令上の要件を満たすことは別途確認
📝
教育実施記録
年度ごとに作成し、法定事項を記録
実施年月日必須
教育を実施した年月日
内容・方法必須
実施した教育内容と、講義・実技訓練・実地教育等の方法
時間数必須
当該教育の時間数。開始・終了時刻も併記しておくと勤怠との照合に有効
実施場所必須
教育を実施した場所を記載
実施者氏名必須
実際に教育を実施した者の氏名
対象警備員氏名必須
教育を受けた警備員の氏名を記載。受講者本人の自署は法令上の必須事項ではありません
確認の付記必須
指導教育責任者及び教育実施者が、記録事項に誤りがないことを確認する旨を付記
⚠ 勤怠記録との整合確認を忘れずに 教育実施記録と配置簿・勤怠記録が矛盾していないか確認してください。 同一時間帯に「現場配置」と「教育受講」が重複していれば、教育を実際に行ったのか記録の信用性に疑義が生じます。 法令上の記録と勤務実態を整合させるため、教育日のスケジュールと勤怠を相互確認する運用を推奨します。
06

保存年限と監査に強いファイリング

保存年限の管理は、監査での指摘リスクを下げる最も地道かつ効果的な対策です。 法定保存期間を満たすことが前提です。保存期間経過後の書類については、 個人情報管理や社内ルールも踏まえて、必要性を判断した上で廃棄・継続保管を管理することが重要です。

教育計画書
2年
当該年度終了日から2年間保存
教育実施簿
2年
当該年度終了日から2年間保存
指導計画書
2年
実地指導の日から2年間保存
警備員名簿
1年
退職日から1年間保存
eラーニング証跡
推奨
法定要件充足の証拠として教育実施記録と同期間の保管を推奨
欠格事由の確認記録
指定なし
施行規則66条2項に一律の法定保存期間の定めなし。社内保存年限を設定して管理
✅ 実務推奨:廃棄予定ラベルの貼付 各書類フォルダに「廃棄予定:○年○月」のラベルを貼付することで、 年限管理が担当者に依存しなくなります。 電磁的保存(PDF管理)の場合は、ファイル名に「廃棄予定年月」を含める命名規則を設けると 一覧管理が容易です(例:「2023年度教育実施簿_廃棄2026年4月.pdf」)。
07

労務視点の重要ポイント――教育時間と賃金

会社が法定教育として受講を義務付ける新任教育・現任教育は、使用者の指揮命令下に置かれる時間として 原則として労働時間に該当します。 そのため、その時間について賃金支払いが必要であり、最低賃金法の適用も受けます。

🚨 「研修中は無給」は違法です 「新任研修中は見習いだから賃金を払わない」「eラーニング視聴は自宅でやってもらうから無給」 といった扱いは、労働時間に該当する教育について賃金を支払わないことになるため、 労働基準法第24条・最低賃金法第4条との関係で問題となります。 教育中の賃金未払いは労働基準監督署の調査対象となるリスクがあります。 具体的な取扱いは就業規則・雇用契約書に明記しておくことが重要です(事実)。
📌 就業規則・雇用契約書への明記事項 以下の内容を就業規則または雇用契約書に明記しておくことで、 トラブルを予防できます。

①会社が受講を義務付ける新任教育・現任教育は労働時間として扱い、賃金を支払う
②自宅でのeラーニング受講を会社が命じる場合は労働時間として算入・賃金を支払う
③教育時間中の交通費・食費等の処理方針
08

まとめ・実務チェックリスト

1
一般警備員の新任教育は20時間以上。実地教育の算入上限は警備員区分ごとに異なり、一般警備員は「実施する業務別教育の1/2・上限5時間」
2
一般警備員の現任教育は年度ごと10時間以上。1級・指導教育責任者は当該業務で免除、2級は当該業務でも6時間以上となるなど区分別特例あり
3
教育免除・短縮は、資格の種類だけでなく「資格に対応する警備業務」と実際の従事業務を個別に照合して判定する
4
eラーニングは、録画教材等の初回視聴時のスキップ不可に加え、本人確認・受講状況・知識習得状況・質疑応答機会の要件を満たす必要がある
5
教育計画書は当該年度開始日の30日前までに備付け。教育実施記録は施行規則66条所定の法定事項と確認付記を記録する
6
教育中は労働時間として最低賃金以上の賃金支払い義務がある
📋 教育記録整備 確認チェックリスト(監査前用)
A. 時間数・対象者の管理
全警備員の教育時間数を個人別に積み上げ管理し、法定時間に達しているか確認したか
検定資格保有者・経験者の特例適用について根拠書類(合格証明書・在職証明等)を保管しているか
資格に対応する警備業務区分と、実際に従事させる警備業務を照合したか
実地教育の算入上限を、各警備員に適用される施行規則38条4項の区分ごとに確認したか
B. 書類の記載内容
教育計画書が当該年度の開始日の30日前までに備え付けられているか
教育実施記録に、実施年月日・内容・方法・時間数・場所・実施者氏名・対象警備員氏名・確認付記があるか
法定時間に不足する者がいないか。追加教育を行った場合、その実施事実が教育実施記録に反映されているか
教育日と配置簿(シフト・勤怠)に矛盾がないか照合したか
C. eラーニング・保存管理
録画教材等を用いるeラーニングで、受講者の初回視聴時にスキップできない設定になっているか
eラーニングについて、本人確認・受講状況・知識習得状況・質疑応答機会を確認できる証跡があるか
教育計画書・教育実施記録を当該年度終了日から2年間保存できる管理になっているか
電子データで管理する場合、立入検査時に内容を確認できる状態で整理されているか
D. 労務管理
新任教育・現任教育の時間に賃金が支払われているか(最低賃金以上)
eラーニングを会社指示で自宅実施させる場合、その時間が労働時間として賃金計算されているか
【根拠法令・公的資料】警備業法第21条第2項・第45条/警備業法施行規則第38条・第66条/「警備員教育を行う者等を定める規程」(平成8年国家公安委員会告示第21号)/令和元年内閣府令第24号/警察庁「新任教育の教育時間数(新旧比較)」「現任教育の教育時間数(新旧比較)」/令和6年3月6日付 警察庁丁生企発第127号/令和6年6月27日付 警察庁丙生企発第240号「警備業法等の解釈運用基準について(通達)」/令和8年9月30日公布・10月1日施行 令和8年内閣府令第85号

本ページは2026年10月15日時点の公的情報を確認して作成しています。教育の免除・短縮は、保有資格、警備業務の区分、従事業務、経験等により個別判定が必要です。また、都道府県公安委員会・管轄警察の様式や確認方法に地域差がある事項は、最新の取扱いをご確認ください。本コラムは情報提供を目的としており、個別案件の法的判断を保証するものではありません。
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