警備業の労働判例・裁判例|監視・断続的労働・適用除外

「警備員だから労働時間規制の適用除外」になるわけではありません。監視・断続的労働の許可は、業務実態と行政官庁の許可を前提とする例外制度です。

府立高校の常駐警備をめぐり、労働基準法41条3号の適用除外許可の適法性、発注者である大阪府の使用者責任、国の損害賠償責任等が争われた事件です。

監視・断続的労働労基法41条3号適用除外許可学校警備長時間拘束施設警備
執筆・監修:山田紘大(社会保険労務士)内容確認日:2026年9月14日

30秒で結論

この判例のポイント

大阪高裁は、当時の学校警備について、巡視が勤務時間全体に占める割合、夜間に仮眠可能であったこと、警報対応が多くなかったこと等から、許可処分当時の業務は身体・精神の緊張が比較的少ない監視労働に当たり、労働基準法41条3号の適用除外許可を違法とはしませんでした。また、発注者の大阪府と警備員の間に、賃金支払義務を負わせるほどの支配従属関係も否定しました。

判例情報

裁判所・日付
大阪高等裁判所 第11民事部/平成2年7月31日
事件番号
平成元年(ネ)第433号
事件名
賃金支払請求控訴事件(近畿保安警備事件)
裁判結果
控訴棄却/確定
第一審
大阪地裁 平成元年2月20日・昭和53年(ワ)第2302号
出典
労民集41巻4号626頁・労判575号53頁ほか

どんな事件だったのか

警備会社が大阪府から府立高校の警備業務を受託し、警備員が常駐警備に従事していました。労働基準監督署長は、警備員について当時の労働基準法41条3号に基づく「監視に従事する者」の適用除外許可をしていました。

その後、警備会社が倒産し、警備員らは大阪府に対する賃金支払責任等や、国に対する国家賠償責任を主張しました。控訴審では、発注者である大阪府と警備員の間の支配従属関係、委託契約による不当利得、適用除外許可の適法性などが問題となりました。

裁判所はどう判断したか

大阪高裁は、大阪府と警備員の間には直接の雇用契約がなく、委託代金や一部労働条件に大阪府の意向が影響していたとしても、賃金支払義務を負わせるほどの支配従属関係は認められないとしました。

また、監視労働の許可について、勤務中の巡視は全体の2割以下で、その他の業務も絶え間なく発生するものではなく、午後10時から翌午前6時までは警報等がない限り特段の業務がなく仮眠可能で、警報も多くて月2回程度であったと認定しました。これらから、許可処分当時の学校警備は身体・精神の緊張が比較的少ない監視労働に当たり、許可処分に違法はないと判断しました。さらに、監督署長に許可後の労働実態を継続的に調査し、基準違反になれば当然に許可を撤回すべき義務まではないとして、国の責任も否定しました。

読み方の注意: 判例は個別の事実関係を前提とした判断です。事件名や結論だけを自社へ機械的に当てはめず、下記の「判断を分けた事実」と現在の法令をあわせて確認してください。

判断を分けた事実

巡視の割合

通常、勤務時間全体に占める巡視時間は2割以下と認定されました。

夜間の業務密度

午後10時から翌午前6時までは警報等がない限り特段の業務がなく、仮眠可能とされました。

警報対応の頻度

盗難・火災警報は誤報が多く、多くても月2回程度と認定されました。

発注者との関係

仕様や委託代金の影響はあっても、発注者が直接の使用者と評価されるほどの支配従属関係は否定されました。

現在の実務で確認する法令

現在も労働基準法41条3号により、「監視又は断続的労働に従事する者」で行政官庁の許可を受けた者には、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用除外があります。ただし、許可が必要であり、警備業務という職種名だけで当然に適用除外になるものではありません。

厚生労働省の現行案内では、監視労働は原則として監視を本来の業務とし、常態として身体又は精神的緊張の少ない業務が対象とされ、車両誘導を伴う駐車場監視等の精神的緊張が高い業務などは対象外とされています。また、許可を受けても深夜労働の割増賃金まで適用除外になるわけではありません。

重要: 本判決当時の業務実態・許可基準をそのまま現在の警備現場へ当てはめないでください。現在の許可可否は、現行の行政運用と実際の業務内容で確認する必要があります。

警備会社に置き換えると

施設警備で長時間の拘束勤務があるからといって、安易に労基法41条3号を前提に勤務設計をしてはいけません。現在の警備現場では、防災センター業務、来訪者対応、救急・災害対応、機器監視、巡回、電話対応など複数業務が重なり、精神的緊張も高いことがあります。

適用除外を検討する場合は、職種名ではなく、実作業時間、手待時間、巡回頻度、緊急対応、精神的緊張、勤務中の業務密度を具体的に整理した上で、所轄労基署への許可申請を検討する必要があります。

結論が変わり得るチェックポイント

  • 所轄労基署から労基法41条3号の許可を実際に受けているか
  • 監視が本来業務で、常態として身体・精神的緊張が少ないといえるか
  • 巡回・受付・電話・救急・防災等の実作業が勤務時間の相当部分を占めていないか
  • 交通誘導・車両誘導等の精神的緊張が高い業務が混在していないか
  • 許可後に業務内容や勤務態様が大きく変化していないか

警備会社の実務チェック

  • 適用除外許可書と現在の警備仕様書・勤務要領を突合する
  • 勤務1回あたりの実作業時間・手待時間・巡回回数・緊急対応件数を記録する
  • 許可申請時から業務内容が変わった現場は所轄労基署へ事前相談する
  • 深夜時間帯の割増賃金が正しく支払われているか確認する
  • 発注仕様が過度な長時間拘束を前提としていないか、見積・契約段階でも点検する
実務上の考え方: 41条3号は「警備業のための特例」ではありません。個々の現場の労働密度と緊張度を数値・記録で説明できる状態にしてから適用可能性を判断するのが安全です。

この判例を使うときの注意

本件は昭和40~50年代の学校警備と当時の許可処分を前提とした事件です。現在の警備業務は機械警備連携、救急対応、入退館管理等で業務密度が高い現場も多く、判決の結論を現代の施設警備一般へ広げることはできません。また、判例データベース上の「労働契約法」分類は現在法による整理であり、本判決当時に労働契約法が適用されたという意味ではありません。

出典・確認資料

判例情報は日本法令の判例データを調査資料として確認し、判決本文の事実関係・判断枠組みを独自に要約しています。日本法令の要旨・評釈等の編集文章を転載するものではありません。

本ページは警備会社の労務管理に役立つ一般情報を提供するもので、個別事件についての法的助言を目的とするものではありません。具体的な判断は、契約・就業規則・勤務実態・証拠関係・現行法令等によって異なります。

執筆・監修:山田紘大|社会保険労務士

警備会社での現場・管理・経営実務を踏まえ、警備業法と労働法の双方から、警備会社の勤務実態に落とし込んで解説しています。

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