警備業の労働判例・裁判例|途中解雇・雇止め・勤務態度

警備先からのクレームだけで直ちに解雇できるわけではありません。本件では、長期間の勤務態度、具体的な問題行動、繰り返された指導、配置転換の経緯などが積み重なって判断されました。

勤務場所を限定した有期契約の警備員について、契約期間途中の解雇と、その後の別現場での有期契約の雇止めが争われた事件です。警備会社特有の「顧客先で勤務する警備員の適格性」が具体的に検討されています。

有期契約途中解雇雇止め勤務態度顧客クレーム警備員
執筆・監修:山田紘大(社会保険労務士)内容確認日:2026年9月14日

30秒で結論

この判例のポイント

東京地裁は、警備員が上司の指示に従わないこと、接遇・勤務態度の問題、顧客先での不適切な行動、繰り返しの指導にも改善がみられなかったこと等を総合し、当該現場の警備業務を行う適格性を欠くとした会社判断を相当と評価し、契約期間途中の解雇を有効としました。その後の別現場での有期契約の雇止めについても、長年の勤務態度や顧客職員に対する訴訟提起等の事情を総合し、合理的理由があると判断しました。

判例情報

裁判所・日付
東京地方裁判所 民事第11部/平成12年11月14日
事件番号
平成10年(ワ)第26126号
事件名
解雇無効確認請求事件(アラコム事件)
裁判結果
請求棄却
主な論点
有期契約の途中解雇/雇止め/警備員の勤務適格性
出典
労働経済判例速報1760号20頁

どんな事件だったのか

原告は、警備会社の登録社員として1年以内の有期雇用契約を反復更新し、複数の警備先で勤務していました。集英社を勤務場所とする1年契約の期間途中に、会社から勤務態度等を理由として解雇され、その後、後楽園場外馬券売場を勤務場所とする新たな有期契約を締結しました。

原告は、最初の途中解雇が無効であること、その後の契約も雇止めではなく更新されたこと、正社員と同等の地位があること等を主張しました。裁判所は、各警備先での具体的な勤務態度、会社による指導経緯、顧客との関係、契約更新の経緯を詳細に認定しました。

裁判所はどう判断したか

裁判所は、企業の警備業務では不審者・不審物の侵入防止だけでなく来訪者対応・接遇も伴い、複数の警備員が上司の指示に従い、相互に円滑な意思疎通と信頼関係を保つことが必要だとしました。

その上で、挨拶等の指導に従わないこと、来客が利用するトイレの洗面台で制服のまま洗髪したこと、制服姿で出退勤途中に駅構内の新聞・雑誌を拾っていたこと等の具体的事情と、会社が複数回指導していた経緯を踏まえ、当該警備先で勤務する適格性を欠くとの判断を相当とし、期間途中の解雇を有効としました。

また、その後の有期契約の雇止めについて、長期間にわたり契約が更新されてきた経緯から、会社が合理的な理由なく更新拒絶することは許されないとの前提に立ちつつ、従前の勤務態度、別現場へ配置した経緯、顧客が行った勤務改善要求を不当として顧客職員個人に訴訟を提起したこと等を総合し、本件の雇止めには社会通念上合理的な理由があると判断しました。

読み方の注意: 判例は個別の事実関係を前提とした判断です。事件名や結論だけを自社へ機械的に当てはめず、下記の「判断を分けた事実」と現在の法令をあわせて確認してください。

判断を分けた事実

問題行動が具体的

抽象的な「態度が悪い」ではなく、挨拶、洗髪、制服着用時の行動等が具体的に認定されました。

継続的な指導

会社は本社面談や現場巡察を通じ、服装・報告・勤務態度等について複数回指導していました。

顧客からの改善要求

警備先から勤務態度・接遇について具体的な苦情・改善要求が寄せられていました。

配置転換後の事情

途中解雇後も別現場を提示して雇用を継続し、その後の事情も含めて雇止めの合理性が判断されました。

現在の実務で確認する法令

本判決は平成12年(2000年)のもので、現行の労働契約法が制定される前の裁判例です。したがって、判例データベース上で労働契約法16条・17条・19条の分類が付されていても、裁判所が当時これらの条文を適用したという意味ではありません。

現在、有期労働契約の契約期間中の解雇は労働契約法17条1項により「やむを得ない事由」が必要です。契約更新の拒絶については、同法19条の適用可能性を確認する必要があります。無期契約の解雇一般については同法16条が関係します。

重要: 本判決の「途中解雇が有効」という結論だけを現在の案件に流用しないでください。現在の有期契約の途中解雇は、労働契約法17条1項を前提に、普通解雇以上に慎重な検討が必要です。

警備会社に置き換えると

警備会社では、顧客から「この隊員を現場から外してほしい」と言われることがあります。しかし、現場から外すことと雇用契約を終了させることは別問題です。別現場への配置可能性、問題行動の具体性、指導・改善機会、就業規則上の根拠、雇用契約の期間の定めなどを切り分けて検討する必要があります。

本件では、単発のクレームではなく、複数現場での勤務態度、具体的な行動、会社の継続指導、配置先の検討などの積み重ねが認定されている点が重要です。

結論が変わり得るチェックポイント

  • 顧客クレームの日時・内容・発言者・具体的事実を記録しているか
  • 本人へ事実確認を行い、弁明の機会を設けているか
  • 注意・指導・教育の内容と改善状況を記録しているか
  • 現場変更や職務変更など、雇用継続の選択肢を検討したか
  • 有期契約の場合、契約期間途中の解雇なのか、期間満了時の雇止めなのかを区別しているか

警備会社の実務チェック

  • 顧客から配置変更要請を受けても、その場で退職・解雇を決めない
  • 警備日報・巡察記録・指導書・顧客メール等の客観資料を確保する
  • 本人面談で問題行動を具体的に示し、改善期限・期待水準を明確にする
  • 有期契約の途中解雇は労働契約法17条1項を前提に「やむを得ない事由」を慎重に検討する
  • 雇止めを行う場合は更新回数・通算期間・更新期待・手続・理由説明を確認する
実務上の考え方: 「顧客が嫌がっている」という一言では足りません。問題行動→事実確認→指導→改善機会→配置可能性→契約終了判断というプロセスを記録で残すことが、警備会社の解雇・雇止めリスク管理の基本です。

この判例を使うときの注意

本判決は現行の労働契約法制定前の裁判例です。現在の有期契約途中解雇には労働契約法17条1項、雇止めには同法19条が関係し、結論が同じになるとは限りません。また、警備先からのクレームがあれば当然に解雇・雇止めが有効になると示した判例でもありません。本件では具体的な問題行動と長期間の指導経緯等が詳細に認定されています。

出典・確認資料

判例情報は日本法令の判例データを調査資料として確認し、判決本文の事実関係・判断枠組みを独自に要約しています。日本法令の要旨・評釈等の編集文章を転載するものではありません。

本ページは警備会社の労務管理に役立つ一般情報を提供するもので、個別事件についての法的助言を目的とするものではありません。具体的な判断は、契約・就業規則・勤務実態・証拠関係・現行法令等によって異なります。

執筆・監修:山田紘大|社会保険労務士

警備会社での現場・管理・経営実務を踏まえ、警備業法と労働法の双方から、警備会社の勤務実態に落とし込んで解説しています。

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