警備業の重要判例|警備業法・欠格事由

2026年2月18日、最高裁大法廷は、旧警備業法が被保佐人を一律に警備員から排除していた規定について、2017年3月の退職時点では憲法22条1項・14条1項に違反するに至っていたと判断しました。一方、国会の立法不作為について国家賠償責任は否定しました。

警備業法 欠格事由 被保佐人 憲法22条 憲法14条 最高裁大法廷 2026年判決
執筆・監修:山田紘大(社会保険労務士) 内容確認日:2026年9月10日

30秒で結論

この判例のポイント

最高裁は、旧警備業法の「被保佐人であること」だけを理由に警備員から一律に排除する規定について、遅くとも2017年3月の退職時点では違憲になっていたと判断しました。ただし、「規定が違憲であること」と「国会が改廃しなかったことが国家賠償法上違法であること」は別問題として、国の賠償責任は否定しました。

判例情報

裁判所・日付
最高裁判所大法廷/令和8年2月18日
事件番号
令和5年(オ)第360号・令和5年(受)第445号
事件名
地位確認等請求事件
裁判結果
破棄自判
原審
名古屋高裁令和4年11月15日判決
主な論点
旧警備業法の欠格事由/職業選択の自由/平等原則/国家賠償

どんな事件だったのか

交通誘導警備に従事していた警備員について保佐開始の審判が確定し、当時の警備業法上の欠格事由に該当したことから、欠格事由の発生を解除条件としていた雇用契約が終了しました。元警備員は、被保佐人を一律に警備員から排除する旧規定が憲法に違反し、国会が改廃しなかったことも国家賠償法上違法であるとして国に慰謝料を求めました。

裁判所はどう判断したか

最高裁大法廷は、被保佐人を一律に警備員から排除する規制は、精神上の障害を理由に職業選択の自由そのものを強く制約し、被保佐人とそれ以外の者を区別するものであるため、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要すると整理しました。成年後見制度への理解、障害者権利条約の批准、国内法整備、個別的な能力審査を行う別の欠格規定の実効性等を踏まえ、2017年3月の退職時点では一律排除による不利益が看過し難く、旧規定は憲法22条1項・14条1項に違反するに至っていたと判断しました。他方、違憲状態が明白であるのに国会が正当な理由なく長期にわたり放置したとまではいえないとして、国家賠償法上の違法性は否定し、元警備員の慰謝料請求を棄却しました。

読み方の注意: 判例は事実関係を前提とした個別判断です。事件名や結論だけを自社へ機械的に当てはめるのではなく、下記の「判断を分けた事実」を比較してください。

判断を分けた事実

一律排除の強い制約

被保佐人であるだけで警備員になれない規定は、職業活動の方法ではなく職業選択そのものを制限しました。

個別能力とのズレ

保佐制度は主に財産管理等の能力を補う制度であり、警備業務遂行能力を一律に否定する制度ではありません。

社会・法制度の変化

障害者権利条約、国内法整備、障害を理由とする差別禁止の考え方の確立等が違憲判断の重要な背景となりました。

違憲と国賠は別

最高裁は旧規定を違憲としながら、国会の立法不作為が国家賠償法上違法となる要件は満たさないとしました。

警備会社に置き換えると

この判決を「障害がある人は警備員の欠格事由にならない」と単純化するのも危険です。問題となったのは、被保佐人という法的身分だけを理由とする旧来の一律欠格です。警備会社は、現在の警備業法上の欠格事由を確認しつつ、本人の具体的な状態と従事予定の警備業務を切り分け、採用・配置判断を行う必要があります。過去の様式や就業規則に削除済みの欠格事由が残っていないかも確認対象です。

結論が変わり得るチェックポイント

  • 就業規則・採用誓約書等に「成年被後見人・被保佐人」を一律排除する旧表現が残っていないか
  • 警備業法上の欠格事由と、会社独自の採用基準を混同していないか
  • 本人の具体的能力ではなく、診断名・制度利用だけで一律判断していないか
  • 従事予定の警備業務に必要な認知・判断・意思疎通等を個別に確認しているか
  • 不採用・配置転換・契約終了の理由を、現行法と具体的事実に基づき説明できるか

警備会社の実務チェック

  • 就業規則・雇用契約書・誓約書の欠格事由条項を現行警備業法に合わせて棚卸しする
  • 採用時の診断書・確認書類の運用が現在の警備業法と一致しているか確認する
  • 「被保佐人だから不可」といった旧制度前提の説明資料を廃止する
  • 個別の能力判断が必要な場面では、業務内容と必要能力を具体化して記録する
  • 法改正前の判例・書籍・社内マニュアルを参照する場合は、現行法との差を必ず確認する
実務上の考え方: 判例を「知る」だけでなく、勤務表・警備計画書・就業規則・警備日誌・賃金計算の整合まで確認すると、紛争予防に使える情報になります。

この判例を使うときの注意

本判決の対象は令和元年改正前の警備業法14条・3条1号のうち、被保佐人を一律に欠格事由とした部分です。当該一律欠格規定は既に削除されています。また、最高裁は国家賠償責任を認めていません。名古屋高裁判決の慰謝料50万円という結論を、最高裁の最終結論として紹介しないよう注意が必要です。

出典・確認資料

判例情報は日本法令の判例データを調査資料として確認し、公開ページでは判決の事実関係・判断枠組みを独自に要約しています。日本法令の要旨・評釈等の編集文章を転載するものではありません。

本ページは警備会社の労務管理に役立つ一般情報を提供するもので、個別事件についての法的助言を目的とするものではありません。具体的な判断は、契約・就業規則・勤務実態・証拠関係等によって異なります。

執筆・監修:山田紘大|社会保険労務士

警備会社での現場・管理・経営実務を踏まえ、警備業法と労働法の双方から、警備会社の勤務実態に落とし込んで解説しています。

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