警備業の労働判例・裁判例|病院警備・仮眠

「仮眠時間は必ず労働時間」という理解も正確ではありません。複数人配置、別室での就寝、実作業の低頻度、実作業時の時間外手当という具体的事情から、仮眠・休憩時間全体の労働時間性が否定された警備会社の事例です。

病院警備 仮眠時間 休憩時間 複数人配置 時間外手当
執筆・監修:山田紘大(社会保険労務士) 内容確認日:2026年9月10日

30秒で結論

この判例のポイント

病院警備で最低4名が配置され、仮眠・休憩時間帯にも別の警備員2名が勤務し、仮眠者は制服を脱いで別室で就寝していました。仮眠・休憩中の実作業も極めて少なく、例外的に作業した時間は時間外手当の対象とする運用があったことなどから、仮眠・休憩時間全体は原則として労働時間に当たらないとされました。

判例情報

裁判所・日付
仙台高等裁判所第3民事部/平成25年2月13日
事件番号
平成24年(ネ)第92号
事件名
賃金等請求控訴事件(ビソー工業事件)
裁判結果
原判決一部変更
上告審
最高裁第三小法廷・平成26年8月26日決定
主な論点
病院警備の仮眠・休憩時間/未払賃金

どんな事件だったのか

宮城県内の病院で保安・防災業務に従事していた警備員らが、仮眠・休憩時間も労働時間であるとして未払賃金等を請求しました。第一審は仮眠・休憩時間全体を労働時間とする方向で大幅な未払賃金を認めましたが、仙台高裁は具体的な勤務実態を精査し、結論を大きく変更しました。

裁判所はどう判断したか

仙台高裁は、仮眠・休憩時間中も役務提供が実質的に義務づけられているかを判断軸としました。本件では、最低4名が配置され、仮眠・休憩時間帯にも1名が守衛室で監視、もう1名が巡回・待機して突発業務へ対応する態勢でした。仮眠者は守衛室と区画された仮眠室で制服を脱ぎ、パジャマ等に着替えて就寝していました。2年8か月半で10名の仮眠中実作業は合計17件、仮眠を実際に中断したものは4件にとどまり、そのうち3件は地震・火災でした。こうした事情から、仮眠・休憩時間全体を一般的・原則的に労働時間とはせず、実際に作業した時間のみ時間外労働として賃金支払義務を認めました。

読み方の注意: 判例は事実関係を前提とした個別判断です。事件名や結論だけを自社へ機械的に当てはめるのではなく、下記の「判断を分けた事実」を比較してください。

判断を分けた事実

複数人の勤務体制

仮眠中でも別の警備員が監視と巡回・待機に就き、通常の突発業務を処理できる態勢がありました。

仮眠室の独立性

守衛室と区画された仮眠室で、シャワー後に制服からパジャマ等へ着替えて就寝していました。

実作業の頻度

仮眠中の実作業は10名合計17件、1人平均で1年に1件未満。仮眠中断はさらに少数でした。

例外時の賃金処理

仮眠中に実作業をした場合は、実作業時間について時間外手当を請求・支給する取扱いがありました。

警備会社に置き換えると

この判例から「4人いれば仮眠は必ず休憩」と一般化するのは危険です。重要なのは人数そのものではなく、仮眠者以外の人員で通常の発報・急患・巡回等を処理できるか、仮眠者への対応要請が制度上・実態上どの程度あるかです。発注者仕様書に「4名以上」と書かれていても、全員が常時実作業に従事する趣旨かどうかまで確認する必要があります。

結論が変わり得るチェックポイント

  • 勤務中の他の警備員だけで通常の緊急対応を完結できるか
  • 仮眠者を起こす頻度が例外的といえる程度か
  • 仮眠室が勤務場所と物理的に区画され、実際に就寝できるか
  • 仮眠中に制服を脱げるか、電話・警報監視が直接課されていないか
  • 仮眠中の実作業を記録し、その時間分の時間外手当を支払っているか

警備会社の実務チェック

  • 現場別に仮眠中の呼出件数を12か月程度集計する
  • 警備日誌と賃金台帳を突合し、仮眠中の実作業が賃金に反映されているか確認する
  • 発注仕様書の必要人員と、実際の『勤務者』『仮眠者』の役割を区別する
  • 仮眠室・無線・警報・外出可否など、労働からの解放を示す実態を整える
  • 就業規則・労働条件通知書・勤務ローテーションの表現を統一する
実務上の考え方: 判例を「知る」だけでなく、勤務表・警備計画書・就業規則・警備日誌・賃金計算の整合まで確認すると、紛争予防に使える情報になります。

この判例を使うときの注意

この判例は「仮眠・休憩中に実作業をしても賃金不要」としたものではありません。実際に作業した時間については時間外労働として賃金支払義務が認められています。

出典・確認資料

判例情報は日本法令の判例データを調査資料として確認し、公開ページでは判決の事実関係・判断枠組みを独自に要約しています。日本法令の要旨・評釈等の編集文章を転載するものではありません。

本ページは警備会社の労務管理に役立つ一般情報を提供するもので、個別事件についての法的助言を目的とするものではありません。具体的な判断は、契約・就業規則・勤務実態・証拠関係等によって異なります。

執筆・監修:山田紘大|社会保険労務士

警備会社での現場・管理・経営実務を踏まえ、警備業法と労働法の双方から、警備会社の勤務実態に落とし込んで解説しています。

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