警備員教育は警備業法第21条に根拠を持ち、
具体的な時間数・方法は警備業法施行規則第38条で定められています。
令和元年(2019年)9月の改正により、時間数の計算方法が大幅に整理されました。
20時間以上
- 基本教育+業務別教育の合算で計算
- 業務別教育の実地教育は5時間以内かつ業務別時間数の1/2以内
- 業務従事前に完了させること
- (改正前:30時間以上)
10時間以上/年度
- 教育期が「前期・後期」→年度単位に変更
- 基本教育・業務別教育の時間数の振り分けは自由
- 検定資格者等は6時間以上に短縮(特例あり)
- (改正前:前後期各8時間、計16時間以上)
📌 「統合」のポイント――振り分けの自由化
令和元年改正の大きな変更点のひとつが、基本教育と業務別教育の
時間数の統合です。旧制度では基本教育・業務別教育それぞれに
独立した最低時間が設定されていましたが、改正後は合算での管理に一本化されました。
そのため計画の柔軟性が増した一方、「どちらに何時間充てたか」の
記録管理がより重要になっています。
根拠法令:警備業法第21条(教育)、警備業法施行規則第38条(教育の内容・方法・時間数)/令和元年8月30日公布・同日施行(内閣府令による施行規則改正)
検定資格の保有・実務経験・警察官経験などにより、
教育時間が免除または短縮される場合があります。
特例適用の有無が管理コストと記録上の正確性に大きく影響します。
| 対象者の区分 |
新任教育 |
現任教育 |
備考 |
| 当該業務1級検定合格者(同業務に就く場合) |
業務別免除 基本のみ実施 |
業務別免除 基本のみ実施 |
改正後の検定合格証明書保有者に限る |
| 当該業務2級検定合格者(同業務に就く場合) |
短縮あり |
6時間以上 |
旧検定合格証は切替後に限り適用 |
| 過去3年間に通算1年以上の同業務経験者 |
短縮あり |
通常10時間以上 |
経験証明書類の保管が必要 |
| 通算1年以上の警察官経験者 |
短縮あり |
通常10時間以上 |
在職証明等の確認・保存が必要 |
| 特例なし(一般警備員) |
20時間以上 |
10時間以上/年度 |
標準的な時間数が適用 |
⚠ 旧検定合格証のまま特例適用は不可
令和元年改正前の旧検定合格証については、新制度の検定合格証明書への
切替手続きを完了した者に限り特例が適用されます。
切り替えていない旧証保有者には免除・短縮は認められません(事実)。
対象者の証明書の種別を確認し、切替状況を名簿上で管理してください。
教育は誰でも実施できるわけではありません。
教育の内容・区分に応じて、実施者に資格要件が定められています。
「誰が教えたか」が記録上明確でないと、監査での指摘対象になります。
📌 教育実施者の要件(警備業法施行規則第38条)
基本教育・業務別教育(講義・実技)は、
①警備業務の区分に応じた指導教育責任者、②当該業務1級検定合格者、
③当該業務2級検定合格者、のいずれかが実施します。
実地教育は上記に加え、
「2年以上継続して当該警備業務に従事している警備員」が実施者になることができます。
ただし実地教育はあくまで新任教育の一環であり、
実際の業務現場での勤務と混同しないことが法令上明記されています。
⚠ 実地教育の時間上限に注意
業務別教育に算入できる実地教育の時間数は、
「業務別教育時間数の1/2」かつ「5時間以内」のいずれか少ない方が上限です。
基本教育と業務別教育の両方を実施する場合(一般警備員の新任教育)は、
業務別教育の実地部分についてのみ上限が適用されます。
計算で端数が生じた場合は、30分以上1時間未満の端数は1時間に切り上げ、
30分未満は切り捨てます(事実:施行規則附則計算ルール)。
根拠法令:警備業法施行規則第38条第2項(実施者の要件)
令和元年改正で、eラーニング(遠隔講義)が教育方法として正式に認められました。
うまく活用すれば集合教育の負担を大幅に軽減できますが、
「視聴した」だけでは算入できない点を理解しておく必要があります。
✅ 算入するために必要な要件
- スキップ・早送りができない仕様であること
- 受講開始・完了の本人確認ができる仕組みがあること
- 対面教育と同等の教育効果が担保されていること
- 修了確認テスト・理解度確認の記録が残ること
- 視聴履歴・ログが保存・出力できる状態にあること
❌ 算入できないケース
- スキップ可能な動画を視聴しただけ
- 受講者が誰かの確認ができない設定になっている
- テスト・確認なしで受講完了扱いにしている
- ログが残っておらず、受講証明ができない
- 実地教育の代替としてeラーニングを使用している
✅ 実務推奨:eラーニングのログ管理
eラーニングのシステム側で生成される
視聴ログ・開始・完了日時・テスト結果・本人確認記録を、
教育実施簿と紐付けて同一フォルダ(または電磁的ファイル)で保管してください。
監査時に「実施の証憑」として活用できます。
紙の実施簿に「eラーニング実施:○時間(ログID:〇〇)」と記載し、
ログを添付する形式が実務上わかりやすい整理方法です。
根拠:警察庁生活安全局長通達(平成31年9月4日付・警察庁丁生企発第23号)「警備業法施行規則及び警備員等の検定等に関する規則の一部を改正する内閣府令等の施行について」(eラーニング算入要件に関する部分)
教育計画書・教育実施簿はどちらも法令上の備付義務があります。
「書類がある」だけでは不十分で、必要事項がすべて記載されていることが求められます。
以下の各書類の必須項目を確認してください。
対象者の範囲必須
教育対象となる警備員の範囲(新任・現任の区別、業務区分ごと)
教育期必須
令和元年改正後は「年度」単位。実施予定時期を記載
教育内容(科目)必須
基本教育・業務別教育の科目を具体的に記載
教育方法必須
対面講義・遠隔(eラーニング)・実技訓練・実地教育の区別を明記
時間数必須
科目ごとの計画時間数。合計が法定時間以上になることを確認
実施者(資格)必須
氏名と資格区分(指教責・1級・2級等)を記載
実施日・時刻必須
開始時刻・終了時刻を明記(時間数計算の根拠となる)
科目・方法・場所必須
「交通誘導業務の安全管理」「対面講義・○○会議室」のように具体的に
教育実施者必須
氏名と資格区分(指教責・1級・2級等)。誰が教えたかを明確に
参加者署名必須
出席した警備員全員の自署。空欄は指摘の最大要因。eラーニングは本人確認記録で代替
理解度確認必須
テスト・質疑応答・確認事項の記録。eラーニングの場合はスコア記録を添付
欠席者補講記録必須
欠席者がいる場合は補講実施後に別途作成。補講記録のない欠席は時間数に不算入
電磁的保存令和6年改正
電磁的方法(PDF等)での保存が認められた。「いつでも出力できる状態」の維持が条件
⚠ 勤怠記録との整合確認を忘れずに
教育実施日・時刻と、配置簿・勤怠記録が矛盾していないか必ず確認してください。
同一時間帯に「現場配置」と「教育受講」が重複している場合、
虚偽記載として処分対象になるリスクがあります。
教育日のスケジューリング段階でシフトとの照合を行う運用を社内で徹底してください。
保存年限の管理は、監査での指摘リスクを下げる最も地道かつ効果的な対策です。
年限を過ぎた書類が「存在する」ことも問題になりえるため、
廃棄管理も含めて一元化することが重要です。
警備員名簿
1年
退職後1年間(在職中は常時最新版)
eラーニングログ
2年
実施簿と同期間・同フォルダで保管推奨
確認票(欠格確認)
1年
退職後1年間。採用時から取得・保管
✅ 実務推奨:廃棄予定ラベルの貼付
各書類フォルダに「廃棄予定:○年○月」のラベルを貼付することで、
年限管理が担当者に依存しなくなります。
電磁的保存(PDF管理)の場合は、ファイル名に「廃棄予定年月」を含める命名規則を設けると
一覧管理が容易です(例:「2023年度教育実施簿_廃棄2026年4月.pdf」)。
警備員教育は労働時間として扱われます。
これは新任教育・現任教育を問いません。
会社が義務として実施させる教育である以上、
その時間に対して最低賃金以上の賃金支払いが必要です。
🚨 「研修中は無給」は違法です
「新任研修中は見習いだから賃金を払わない」「eラーニング視聴は自宅でやってもらうから無給」
といった扱いは、労働基準法違反(最低賃金法違反)に該当します。
教育中の賃金未払いは労働基準監督署の調査対象となるリスクがあります。
具体的な取扱いは就業規則・雇用契約書に明記しておくことが重要です(事実)。
📌 就業規則・雇用契約書への明記事項
以下の内容を就業規則または雇用契約書に明記しておくことで、
トラブルを予防できます。
①新任教育・現任教育の時間は労働時間として扱い、所定賃金を支払う
②自宅でのeラーニング受講を会社が命じる場合は労働時間として算入・賃金を支払う
③教育時間中の交通費・食費等の処理方針
1
新任教育は20時間以上(基本+業務別合算)、実地教育は「業務別時間数の1/2かつ5時間以内」が上限
2
現任教育は年度ごと10時間以上。検定2級合格者等は6時間以上の特例あり
3
旧検定合格証保有者は新証への切替後でないと免除・短縮特例が適用されない
4
eラーニングはスキップ不可・本人確認・修了テスト・ログ保存の要件を満たして初めて算入可
5
教育計画書は期開始30日前備付義務。実施簿には署名・時刻・科目・実施者の資格を漏れなく記載
6
教育中は労働時間として最低賃金以上の賃金支払い義務がある
📋 教育記録整備 確認チェックリスト(監査前用)
A. 時間数・対象者の管理
全警備員の教育時間数を個人別に積み上げ管理し、法定時間に達しているか確認したか
検定資格保有者・経験者の特例適用について根拠書類(合格証明書・在職証明等)を保管しているか
旧検定合格証保有者が新証への切替を完了しているか確認したか
実地教育が「業務別時間数の1/2かつ5時間以内」の上限を超えていないか確認したか
B. 書類の記載内容
教育計画書が教育期開始30日前に備え付けられているか
教育実施簿に開始・終了時刻、科目、実施者の資格、参加者全員の署名があるか
欠席者の補講が実施され、補講分の実施簿が別途作成されているか
教育日と配置簿(シフト・勤怠)に矛盾がないか照合したか
C. eラーニング・保存管理
eラーニングの視聴ログ・本人確認記録・テスト結果が実施簿と紐付けて保管されているか
各書類に廃棄予定日のラベルが付いているか(教育計画書・実施簿:教育期終了後2年)
電磁的保存の場合、いつでも出力・閲覧できる状態が維持されているか
D. 労務管理
新任教育・現任教育の時間に賃金が支払われているか(最低賃金以上)
eラーニングを会社指示で自宅実施させる場合、その時間が労働時間として賃金計算されているか
【根拠法令・資料】警備業法第21条(教育)/警備業法施行規則第38条(教育の内容・時間数等)/令和元年8月30日施行内閣府令(施行規則改正・新任20h・現任10h・eラーニング正式化)/令和6年4月1日施行改正警備業法(電子化・認定証廃止等)/警察庁生活安全局長通達(平成31年9月4日付・警察庁丁生企発第23号)
本コラムは情報提供を目的としており、個別案件の法的判断を保証するものではありません。都道府県警察の運用指針により細部が異なる場合があります。具体的な対応については管轄警察または専門家にご確認ください。
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