警備業の法定備付書類8種類と保存期間まとめ
― 立入検査で必ずチェックされる帳票を法令根拠とともに整理
公安委員会の立入検査で最初に確認される「営業所の法定備付書類」。
警備業法第45条・施行規則第66条に基づき、8種類の書類名・記載事項・保存期間を正確に整理します。
警備業の公安委員会立入検査では、現場業務の実態とともに「営業所の帳票類が整備されているか」が厳しく確認されます。8種類の法定備付書類は、記載内容・更新状況・保存期間のすべてが確認対象です。「書類は揃っているがどれを何年保存すればよいかわからない」という状態は、立入検査で指導を受けるリスクを抱えています。
法定備付書類とは何か(根拠条文)
警備業法施行規則第66条第1項:第1号〜第8号で書類の種類を列挙。
同条第2項:一部の書類の保存期間を規定(退職後1年・指導日から2年・教育期修了後2年)。
「内閣府令で定める書類」とは施行規則第66条第1項各号に列挙された8種類を指します。これらは社内管理書類ではなく法律上の義務として定められた帳票であり、公安委員会の立入検査において優先的に確認されます。
重要なのは「営業所ごと」という点です。主たる営業所にまとめて保管すれば良いという解釈は誤りです。複数の営業所を持つ警備会社は、それぞれの営業所に備え付けが必要です。
8種類一覧と保存期間まとめ表
以下が警備業法施行規則第66条第1項第1号〜第8号に規定された営業所の法定備付書類と、同条第2項に基づく保存期間の一覧です。
| 号 | 書類名(通称) | 保存期間 | 起算点 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 1号 | 警備員名簿(写真付き) | 事実 退職後1年間 |
当該警備員が退職した日 | 施行規則66条1項1号・2項 |
| 2号 | 確認票 (欠格事由確認書類・誓約書) |
明示なし 実務上:名簿に準じて保存 |
— | 施行規則66条1項2号 |
| 3号 | 護身用具台帳 (護身用具数量書) |
明示なし 実務上:長期保存 |
— | 施行規則66条1項3号 |
| 4号 | 指導計画書 | 事実 指導日から2年間 |
実地に指導した日 | 施行規則66条1項4号・2項 |
| 5号 | 教育計画書 | 事実 教育期修了後2年間 |
当該教育期が修了した日 | 施行規則66条1項5号・2項 |
| 6号 | 教育実施簿 | 事実 教育期修了後2年間 |
当該教育期が修了した日 | 施行規則66条1項6号・2項 |
| 7号 | 警備契約一覧表 (契約先一覧) |
明示なし 実務上:長期保存 |
— | 施行規則66条1項7号 |
| 8号 | 苦情処理簿 | 明示なし 実務上:長期保存 |
— | 施行規則66条1項8号 |
各書類の記載事項と保存期間の詳細
実務上の注意:採用・退職の都度、速やかに更新が必要です。退職者の名簿を現役扱いのまま放置すると即座に指導対象となります。また写真の撮影日が「3年超」になっていないか定期確認が必要です。
実務上の注意:採用時に必ず取得が必要な書類です。
実務上の注意:護身用具の増減があった際は都度更新します。「変更がないから更新しなくてよい」は通用しません。
実務上の注意:指導計画書は「計画を立てた」証拠、教育実施簿は「実際に指導した」証拠として機能します。計画のみで実施記録がない場合、または実施したが計画書がない場合は指摘対象となります。
実務上の注意:教育期の開始日の30日前までに備え付けることが義務です。年度が始まってから作成した場合は法令に反すると評価されるおそれがあります。
実務上の注意:教育実施簿は勤怠記録・賃金台帳との整合性も重要です。教育実施簿に「5時間の現任教育を実施」と記録があるのに、その日のタイムカードが公休(無給)となっていた場合、警備業法上の記録の信頼性が疑われ、労働基準法上の賃金未払いの問題としても指摘されるおそれがあります。3帳票のクロスチェックが必要です。
下請・再委託がある場合:元請け警備会社名・再委託先・業務内容も記載し、両社の契約書写しを添付することが望ましいとされています(警察庁通達「警備業者に対する警備業務提供委託に関する指針」に基づく指導)。
対象範囲の注意:記録すべき苦情は、警備契約の依頼者からのものに限らず、警備業務実施場所の周辺住民・通行者からの苦情も含まれます(警察庁解釈運用基準)。「依頼者からの苦情だけ記録すれば良い」という理解は誤りです。
「保存期間の定めがない」4種類の正しい取り扱い
確認票・護身用具台帳・警備契約一覧表・苦情処理簿の4種類は、警備業法・施行規則上に保存期間の規定がありません。これは「いつ廃棄してもよい」という意味ではありません。
実務上の推奨(当事務所の助言):訴訟リスク・行政対応での証拠保全の観点から、長期保存(事実上の永久保存)を推奨します。
したがって「法令上の保存義務として永久保存が課されている」わけではなく、「廃棄してよい根拠がないため、実務上は長期保存とすることが望ましい」という整理になります。
特に苦情処理簿は、現場でのトラブルが後日損害賠償請求に発展した際の重要な防御証拠となります。契約一覧表も、過去の契約内容をめぐる紛争で参照が必要になることがあります。
ただし、立入検査当日に「担当者が不在でシステムにアクセスできない」「パスワードを知っている人がいない」という状態では、書類を「備え付けていない」とみなされるリスクがあります。営業所内の複数人が即時に出力できる体制の整備が不可欠です。
電子保存を行う場合は、各都道府県公安委員会の運用基準・ガイドラインも必ず確認してください。
立入検査で指摘されやすい3つのリスク
教育実施簿に「5時間の現任教育を実施」と記録があるのに、その日の勤怠記録が「公休(無給)」になっているケースです。これは、警備業法上の教育記録の信頼性が疑われるとともに、労働基準法上の賃金未払いの問題としても指摘されるおそれがあります。教育実施簿・勤怠記録・給与明細の3帳票をクロスチェックする体制が必要です。
警備員名簿には3年以内に撮影した写真の貼付が義務です。採用から3年以上経過した警備員について写真の更新が漏れているケースは頻繁に指摘されます。採用から2年経過時点でリマインダーを設定するなど、更新管理の仕組みを整備することを推奨します。
教育計画書は「教育期の開始日の30日前まで」に備え付けることが義務です。年度が始まってから慌てて作成する運用では法令に反すると評価されるおそれがあります。前年度のうちに翌年度の教育計画書を作成・備え付けておくことが必要です。なお教育計画書は教育期修了後2年間の保存も義務付けられています。
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