「良かれと思って」が落とし穴に?会社を守る残業代と労働時間の基礎知識
「うちの会社は、残業代込みのお給料(固定給)にしているから大丈夫」
「社員たちも納得して頑張ってくれているから、細かい計算はしていなかった」

経営者様のお話を伺っていると、決して悪意があるわけではなく、むしろ「社員の生活が安定するように」「細かい計算の負担を減らすように」という良かれと思っての配慮から、独自の給与ルールを運用されているケースによく出会います。
しかし、労働基準法という法律の性質上、こうした独自のルールが後から「未払い残業代」として想定外のリスクに変わってしまうことがあります。本記事では、経営者様が会社を安全に守っていくために知っておきたい労働時間と残業代の基本について、分かりやすく解説します。
この記事の目次

1. 労働基準法が定める「労働時間」の基本ルール

労働基準法では、社員の健康と生活を守るための大原則として、労働時間の上限が定められています。

具体的には、「1日8時間、週40時間」が法定労働時間となります。もし、業務の都合でこの時間を超えて働いてもらう必要がある場合には、事前に会社と社員との間で「36協定(さぶろくきょうてい)」という約束を交わし、労働基準監督署へ届出をしておく必要があります。
その上で、法定労働時間を超えた分については、通常の賃金に一定の割増し(原則25%以上)を加えた「残業代」をお支払いすることが、法律上のルールとなっています。

2. 想定外の負担を防ぐために知っておきたいこと

残業代の計算が正確に行われていない場合、どのようなことが起こり得るのでしょうか。経営者様を脅かすつもりは全くありませんが、会社を守るための知識として、ぜひ知っておいていただきたい点があります。

時効の延長と、さかのぼっての計算

「社員から何も不満が出ていないから大丈夫」と思っていても、退職時などのタイミングで、過去の残業代の見直しを求められるケースが増えています。
以前は残業代をさかのぼって請求できる期間(時効)は過去2年分でしたが、2020年4月の法改正により「過去3年分」(将来的には5年分に延長される見込み)へと期間が長くなりました。

資金繰りに影響を与えることも

もし、毎月数万円分の計算モレがあり、それが3年分(36ヶ月分)まとまってしまった場合、1人あたりでも大きな金額になります。
長年会社のために頑張ってくれた社員と、最後にお金の問題ですれ違ってしまうのはお互いにとって悲しいことですし、まとまった資金の流出は会社の経営計画にも影響を及ぼしかねません。

3. まずは見直したい!安心のためのチェックポイント

こうした想定外の事態を防ぐために、自社の給与の仕組みや勤怠管理が法律に沿っているか、以下の点を少しだけ振り返ってみてください。

安心のための確認ポイント
  • 勤怠管理:
    手書きや記憶に頼らず、タイムカードやシステム等で、日々の労働時間を客観的に記録できていますか?
  • 36協定の届出:
    残業が発生する可能性がある場合、最新の36協定を毎年労働基準監督署に届出していますか?
  • 割増賃金の計算:
    残業時間や、深夜労働、休日労働に対して、法律で定められた割増率(25%や35%など)で正しく計算されていますか?
  • 固定残業代(みなし残業代):
    「手当の中に残業代を含めている」という場合、何時間分の残業代なのかを給与明細や就業規則で明確にし、その時間を超えた分は追加でお支払いしていますか?

特に「固定残業代」の制度は、導入すること自体は全く問題ありませんが、「基本給と残業代部分が明確に分かれていること」や「超過分を別途支給すること」などの厳格なルールを守らないと、法的に認められないケースが多いので注意が必要です。

まとめ:ルールを整えることが、双方の安心を生む

労働基準法のルールは細かく、すべてを完璧に把握するのは本当に大変だと思います。しかし、労働時間と残業代のルールを整えることは、社員が安心して長く働ける環境を作り、何より経営者様ご自身を予期せぬトラブルからお守りすることにつながります。

まずは「労働時間の正しい記録」と、「残業代の計算方法の確認」から
少しずつ現状を整理していきましょう。

「うちの給与計算、このやり方で大丈夫かな?」「固定残業代を入れたいけれど、どうすればいいの?」といった疑問やご不安がありましたら、一人で悩まずに私ども社会保険労務士にご相談ください。御社の実情を丁寧にお伺いし、無理なく適法に運用できる仕組みづくりを一緒に考えさせていただきます。

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