⑦ 警備員の就業規則、一般テンプレートでは対応できない理由
「就業規則はある」では不十分な理由
就業規則は、常時10名以上の労働者を使用する事業場に作成・届出が義務付けられています(労働基準法第89条)。多くの警備会社では、開業時や従業員が増えたタイミングで就業規則を整備しています。
しかし、問題はその中身です。
インターネット上に無料で公開されているテンプレートや、一般的な社労士が作成する就業規則の多くは、「製造業・小売業・オフィスワーク」を前提に設計されています。警備業固有の業務特性や法規制は、最初から想定されていません。
その結果、**「就業規則はあるが、警備業の実態と乖離している」**という状態が生まれます。これは、就業規則がないことと実質的に変わらないリスクをはらんでいます。
一般テンプレートで対応できない6つのポイント
① 変形労働時間制の規定
警備業では夜勤・宿直・24時間勤務が常態化しており、1ヶ月単位または1年単位の変形労働時間制の導入が不可欠です。しかし一般テンプレートでは、この規定が存在しないか、あっても警備業のシフト実態に対応した内容になっていません。変形労働時間制の根拠規定が就業規則にない場合、実際のシフトがすべて時間外労働として扱われるリスクがあります。
② 仮眠・手待時間の取り扱い
宿直勤務や施設警備において避けられないのが、仮眠時間・手待時間の問題です。「警報に備えて待機している時間」は、実態によっては労働時間と判断されます(大星ビル管理事件・最高裁平成14年2月28日判決)。一般テンプレートにはこの規定が存在せず、労使間でトラブルになった際の根拠がありません。
③ 警備業法上の教育義務との連動
警備業法では、警備員に対して「新任教育」「現任教育」を実施する義務が定められています(警備業法第21条)。この教育の実施時間・方法・記録保管について、就業規則と整合性が取れていなければ、公安委員会の立入検査で指摘を受ける原因になります。一般テンプレートには当然この規定は存在しません。
④ 指導教育責任者・機械警備業務管理者の役割規定
警備業法が定める「指導教育責任者」「機械警備業務管理者」という役職は、一般業種には存在しません。これらの職務権限・責任範囲を就業規則に明記しておくことは、組織運営上の明確化だけでなく、警備業法上の義務履行の証明にもなります。
⑤ 欠格事由に関する規定
警備業法第14条は、警備員になれない欠格事由(禁錮以上の刑に処された者など)を定めています。採用時の確認義務・雇用継続中に欠格事由が生じた場合の対応について、就業規則に規定しておかなければ、発覚時の対処が法的に困難になります。一般テンプレートにはこの規定が含まれていません。
⑥ 制服・護身用具の取り扱い規定
警備業では制服・警戒棒・手錠等の護身用具が業務上の必需品です。これらの貸与・返却・紛失時の取り扱いについて就業規則に明記しておかないと、退職時のトラブルや備品管理の問題が発生した際に対応できません。
「作ったきり」の就業規則が抱えるリスク
就業規則は、作成時点の法令に対応していれば足りるものではありません。労働基準法・育児介護休業法・パートタイム有期雇用労働法など、労働関係法令は毎年のように改正されます。
警備業に関しては、さらに警備業法の改正にも目を向ける必要があります。
数年前に作成した就業規則をそのまま使い続けている場合、以下のリスクが蓄積されています。
- 育児介護休業規程が最新の法改正(産後パパ育休・有期雇用労働者の要件緩和等)に対応していない
- 最低賃金の改定に伴う賃金規程の見直しが行われていない
- 同一労働同一賃金への対応が不十分
これらの未対応は、労働基準監督署の調査や従業員からのトラブル発生時に、会社側の対応を著しく困難にします。
当事務所の就業規則作成・整備サービス
当事務所では、警備業法と労働基準法の両方に精通した立場から、警備会社に特化した就業規則の作成・整備を行っています。
具体的には以下に対応します。
- 変形労働時間制・仮眠時間・深夜割増を織り込んだ本則の作成
- 最新法令に対応した賃金規程・育児介護休業規程の整備
- 警備業法上の教育義務・欠格事由・指導教育責任者規定の組み込み
- 既存規則の法的監査と改善提案
まずは現在の就業規則を送っていただくだけで、無料で簡易チェックを実施します。「うちの規則は大丈夫か」という確認だけでも歓迎です。