⑤数字で見る警備員
1|警備員の総数と年齢構成
- 全国警備員数:58万7,848人(2024年末・警察庁「令和6年警備業の概況」)
- 60歳以上の比率:47.0%
└ 60~64歳:12.7%
└ 65~69歳:13.4%
└ 70歳以上:20.9% - 20代はわずか数%台、若年層の定着が課題
高齢者雇用の受け皿としての役割を担いつつ、若手不足が顕著。
2|性別と雇用形態
- 女性比率:7.3%(約4万人)
- 常用雇用:91.2%
- 臨時・短期雇用:8.8%
女性の参入はまだ少数派。雇用の安定度は比較的高いが、福利厚生の整備が定着に影響。
3|事業者規模と業界構造
- 警備業者の90.2%は従業員100人未満の中小
- 大手は首都圏に集中し、地方は中小が主体
地域によって労務管理体制や教育水準に大きな差が出やすい。
4|在職年数と定着度
- 在職年数「3年以上」:61.6%
└ 3~10年:32.0%
└ 10年以上:29.6% - “長期勤務者が一定割合いる”のが特徴
高齢者でも長く続けやすい職場環境が整えば、定着率は高まりやすい。
5|業務区分と現場の実態
- 1号警備(施設):64.5%
- 2号警備(交通誘導・雑踏):81.4%
- 3号警備(輸送):6.1%
- 4号警備(身辺):6.5%
※複数回答のため合計100%超
現場の大半は施設と交通誘導。天候や事故リスクが高い2号警備は人材確保が難しい分野。
6|給与と労働時間
- 施設警備員の平均年収:353.8万円(厚労省・賃金構造基本統計調査2024)
- 時間当たり賃金:
└ 常勤:1,594円
└ 短時間:1,335円 - 月の所定労働時間:166時間前後
責任の重さに比して賃金水準は低め。夜勤や24時間勤務による割増で月収差が大きい。
7|労働時間と勤務形態
- 24時間勤務+明け休みが定着している現場も多い
- 労働時間は月180~200時間程度(業界調査)
- 夜勤や長時間労働が離職理由の上位
法的な時間外管理・休憩環境の整備が不可欠。
8|求人・採用環境
- 保安職業の有効求人倍率:5.72倍(2025年5月、厚労省職業安定局統計)
- 全職業平均:1.22倍(同月)
圧倒的な売り手市場。求人票の書き方・労働条件の透明性が採用力を大きく左右。
9|社会的役割と意識
- 警備業は「国民生活の安全を守る最後の砦」
- 事件・事故防止に寄与した事例は年間数千件にのぼる(警察庁報告)
- 一方で仕事満足度は全産業平均より低い傾向(リクルートワークス調査)
誇りを持ちながらも、待遇や評価の低さがモチベーション課題に。
まとめ ― 数字が示す未来
- 高齢化率47% → シニア雇用の工夫が不可欠
- 女性比率7% → 女性活躍の余地が大きい
- 年収354万円・時給1,594円 → 責任に比べて低水準
- 求人倍率5.7倍 → 採用競争は極めて厳しい
- 在職3年以上61.6% → 定着率改善の余地あり
数字で見ると、警備業は「人が足りない」「給与が低い」「高齢化が進む」といった課題ばかりが浮かび上がります。しかし、裏を返せば、それだけ 改善すれば大きな伸びしろがある業界だということです。
警備員の声に耳を傾け、勤務シフトの工夫や休憩環境の整備、待遇や福利厚生の透明化を一つずつ積み上げていくことで、「人が集まる会社」「安心して長く勤められる会社」に必ず近づきます。
採用難や離職率の高さは、どの会社も直面している共通の悩みです。だからこそ、他社より一歩踏み込んで改善を示せる企業は、それだけで強い魅力を発揮できます。